セルフメディケーション シリーズ 対談:真のセルフメディケーションの浸透を目指して

セルフメディケーション シリーズ 対談:真のセルフメディケーションの浸透を目指して

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連載Vol.2 今より半歩でも正しい食事へ 医薬情報研究所/(株)エス・アイ・シー医薬情報部門責任者 堀 美智子氏(薬剤師)

医薬情報研究所/(株)エス・アイ・シー医薬情報部門責任者 堀 美智子氏(薬剤師)

連載Vol.2 今より半歩でも正しい食事へ

Q:
前回は、セルフメディケーションもいろいろな商品の活用によって無駄な我慢はしなくていい時代になるというお話をうかがいました。しかし、「正しい食」一つを取っても、浸透には時間がかかるのではないでしょうか?
A:
確かに、注意喚起が必要な事柄は多岐にわたります。まず、日本人のEPA/AA比は平均0.6ぐらいでそんなに高くないのです。これは、血液中の EPA(エイコサペンタエン酸)とアラキドン酸※ の比で、値が大きいほど動脈硬化などの炎症がない健康な状態と言えます。肉やリノール酸などn-6系の脂肪酸を多く含む食物を摂るほど、値は小さくなり、魚油などn-3系の脂肪酸を含む食物を摂るほど値は大きくなります。理想は0.75以上と言われていますが、実は日本人の若者はもっと低い人も多く、0.1や0.2の値の人もいるというデータ報告もあります。
ご子息の正隆さんと薬の標本箱の前で
Q:
深刻ですね。やはり食生活に問題があるのでしょうか?
A:
そうですね。例えば、朝に菓子パン、昼にコンビニのおにぎりとドレッシングをかけた野菜サラダ、夜に唐揚げだと、n-6系ばかり。n-3系が少ないというよりは、n-6系の摂り過ぎなのです。薬局では、さまざまな生活者が置かれている環境を垣間見ることができます。理想論を伝えても、簡単に習慣が変わるわけではありません。変えられないからこそ、今の状態があるのです。私だって、そうですもの(笑)。だから、「おにぎりよりサラダを先に食べましょうね」「EPA入りの魚肉ソーセージや、抗酸化作用が期待できるポリフェノールが豊富なチョコレートをおやつに食べませんか」「夜には、もずくや納豆を足しませんか」と半歩でも前に進むための情報提供を心がけています。せっかくお一人お一人と話せる職業なわけですから、その人に合った内容に変えてお伝えすることが大切。これからの薬剤師には、知識に加えて人間性が大事になってくると言えるでしょう。
Q:
企業理念に、患者さんと同時に「地域」も大切にすると掲げていらっしゃいますね。
A:
本来「かかりつけ薬剤師」は、そこの土地で生活し、そこのお祭りに参加する住民です。この地域の人たちが何に楽しみを見出しているかを知り、一緒に喜び、一緒に哀しむ。「かかりつけ」という言葉は、地域の人たちに寄り添うことができた時に、初めて生きてくるのではないかと思っています。

とても素敵なお話です。次回は、このほど先生が開発された新しいシステムについて伺います。

※どちらも食べて取り入れる必要のある「必須脂肪酸」で、不飽和脂肪酸の一種。EPA(エイコサペンタエン酸)はDHA(ドコサヘキサエン酸)と共に魚油に多く含まれるn-3系(オメガ3系)脂肪酸で、動脈硬化など炎症を抑える効果が知られている。一方のAA(アラキドン酸)は肉やコーン油に含まれるn-6系(オメガ6系)脂肪酸で、むしろ炎症の原因となる。

VOL.3 へ続く >>

堀 美智子(ほり・みちこ)
プロフィール
医薬情報研究所/(株)エス・シ・シー医薬情報部門責任者。1994年に薬剤師の夫や帝京大学医薬情報室に勤務していた仲間と東京都八王子市で株式会社エス・アイ・シーを設立し、取締役に就任。情報の種を撒く会社として、書籍やデータベースによる医薬情報提供等を行う。ラジオ番組「健康ネットワーク」(ラジオNIKKEI)には、パーソナリティとしてレギュラー出演。月刊誌『調剤と情報』(じほう)など複数の専門誌に記事を連載。2017年初頭にスマホ用アプリ「スマ的健康ライフ」を発表、セルフメディケーションの普及を推進している。同社は薬局2店舗(公園前薬局、公園前薬局暁店)も経営。社員約20人の半数以上を薬剤師が占めるという、卓越した会社である。

医薬情報研究所/(株)エス・アイ・シー
https://www.sic-info.co.jp

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