セルフメディケーション シリーズ 対談:チョコレートとカラダのおいしい関係について

セルフメディケーション シリーズ 対談:チョコレートとカラダのおいしい関係について

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連載Vol.3 チョコレートと腸内フローラ 愛知学院大学心身科学部 客員教授 大澤 俊彦氏(おおさわ としひこ・農学博士)

愛知学院大学心身科学部 客員教授 大澤 俊彦氏(おおさわ としひこ・農学博士)

連載Vol.3 チョコレートと腸内フローラ

Q:
長年、抗酸化作用をご専門としてきた大澤先生は、「発酵レモン」の研究でもフラボノイドやポリフェノールなどの健康効果を証明されています。チョコレートの製造工程にも「発酵」がありますが、それも健康に関係があるのでしょうか?
A:
ええ。意外と知られていませんが、チョコレートは発酵食品です。あの美しい茶色は発酵による色です。2015年に、愛知県蒲郡市(がまごおりし)と、お菓子メーカーの明治、我々の研究室(愛知学院大学)が産官学共同でカカオポリフェノールの研究をしました(詳細は後述)。蒲郡市民を中心とした347人の45~69歳の方々に、72%の高カカオチョコレートを毎日5粒(25g)食べてもらったところ、いろいろなチョコレートの効果が明らかになりました。その調査のアンケートで、図らずも、複数の女性の便通が良くなったことがわかりました。これはポリフェノールの効果ではないし、チョコレートはココアほど食物繊維を含まない。なぜだろうと帝京大学の古賀准教授が中心になって調べたところ、カカオプロテインが腸内フローラ(腸内細菌叢)を改善することがわかったのです。チョコレートのカカオ豆は、ガーナなど熱帯で栽培されるカカオの実から取り出した種子を1週間ほど発酵させることで、あの独特な香りの成分を醸成します。この発酵段階でつくられるのが、カカオプロテインです。消化されにくい物質なので腸内に届いて細菌の餌になり、便通を改善したと考えられます。
Q:
おいしいチョコレートで「快腸」になるのは嬉しいですね。腸内細菌と言えば、少量の尿で、自分が持っている腸内細菌の状態が、ある程度わかるそうですね?
A:
「ソイチェック」ですね。エクオールの産生能力を簡単に測るキットです。私どもが2010年に立ち上げた名古屋大学発のベンチャー企業「株式会社ヘルスケアシステムズ」で開発したもので、すでに商品化されています。エクオールは、女性ホルモンのエストロゲンとよく似た物質で、更年期障害の予防や緩和に役立つのですが、大豆イソフラボンの一種(ダイゼイン)を、腸内細菌が変化させてつくる代謝物質なのです。ですから、腸内環境によってはエクオールを産出できません。日本人は約半数、若い女性に絞ると70~80%もの人が、変換できないと言われています。大豆を食べてから採尿した尿を送れば、検査機関が、この変換能力の有無を調べて、お知らせします。他にも、尿中の成分をバイオマーカーとする検査として、体内のさびつき度合を調べる「サビチェック」があります。これは、遺伝子が酸素でどの程度傷ついているかを測るもので、3000~4000円です。同社では、血液や涙などで体内の状態を知ることができるキットも開発しています。将来的にはもう少し価格を下げて、セルフメディケーションに役立ててもらうようにしたいですね。

VOL.4 へ続く >>

大澤 俊彦(おおさわ・としひこ)
プロフィール
愛知学院大学心身科学部 客員教授。農学博士。1946年兵庫県生まれ。1969年東京大学農学部農芸化学科卒業、1974年同博士課程修了後、1977年までオーストラリア国立大学でリサーチフェロー。名古屋大学で機能性食品の研究を続け名誉教授に。1989年よりカリフォルニア大学デービス校環境毒性学部客員教授。2010年に名古屋大学発ベンチャー「株式会社ヘルスケアシステムズ」を立ち上げる。同年より現職。Antioxidant Unit(食品の抗酸化力の統一指標:略称A.O.U)研究会理事長、日本酸化ストレス学会理事、日本食品安全協会理事、「日本を健康にする!」研究会副会長などを務める。共著に朝倉書店『チョコレートの科学』 (食物と健康の科学シリーズ) など。

※掲載プロフィールは取材日(2017.2.16)当時のものです。

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