セルフメディケーション シリーズ 対談: 糖尿病専門の内科医が語る口腔ケアの重要性

セルフメディケーション シリーズ 対談:糖尿病専門の内科医が語る口腔ケアの重要性

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連載Vol.2 糖尿病専門の内科医が語る口腔ケアの重要性 にしだわたる糖尿病内科 院長 西田 亙

にしだわたる糖尿病内科 院長 西田 亙

連載Vol.2 糖尿病は「社会病」

池田アイコン:
糖尿病の患者さんを取り巻く状況について、どうお考えですか。
西田アイコン
現代は不眠不休の24時間社会となり、不規則な生活を送っている患者さんが多くいます。長距離トラックの運転手や介護士など、深夜も働く人たちは食生活も偏りがちです。糖尿病は生活習慣病と呼ばれていますが、私はこの言い方が好きではありません。「生活習慣が悪いから罹る自己責任の病気」というイメージを植えつけてしまうからです。糖尿病も歯周病も、夜間業務や安い給料、不規則にならざるを得ない今の社会の在り方に起因している、いわば「社会病」と呼ぶべきものです。
池田アイコン
糖尿病患者さんへの指導は、これはダメ、あれもダメといった注意事項が多いと感じます。西田先生のおっしゃるように、「糖尿病は社会病」という意識を持つと、自ずと指導の言葉も変わってくるのではないでしょうか。
西田アイコン
なんでも「ダメ」と禁止するのは、メディカルハラスメントじゃないかと感じますね。食事指導でも、「これならおいしく食べられますよ」と言ったほうが患者さんは前向きになれるはずです。長距離トラック運転手の患者さんは、運転していると必ず腹が減ります。夜中につい食べてしまう気持ちはよくわかりますよね。そんな時、「また何か食べたの?ダメでしょ!」と責めるより、低糖質でおいしい<ドクターズチョコレート>のようなおやつを勧めたほうがいいじゃありませんか。
池田アイコン
そう言っていただけてとても嬉しいです。特に高齢の男性に面と向かって「これはダメです」と言ってしまうとプライドが傷つくこともあるでしょうし、隠れておやつを食べる「隠れおやつ」に罪悪感を抱く人もいます。「ダメ」だらけの食事指導では、息がつまってしまいますよね。
西田アイコン
私は初診の際、必ず患者さんに職業を聞くことにしています。いきなり聞いても答えたくない人もいますから、まずは食事の話から入ります。「晩ごはんは何時に食べますか?」と聞いて「夜の10時」と返ってくれば、「遅くまで大変ですね、ご苦労様です。ご家族のために遅くまで働いていらっしゃるんですね」と、ねぎらうと、患者さんは「自分を理解してくれた」と感じ、話をしてくれるようになります。糖尿病の治療を行うには患者さんの生活パターンを知る必要があるので、患者さんの話に耳を傾けるという姿勢が何よりも大切です。
池田アイコン
西田先生のクリニックに患者さんが集まるのがよくわかります。そういったお考えはどのように身につけられたのですか。
西田アイコン
開業間もない頃、患者さんが少なく、どうしたら来ていただけるのか深く考えました。その中で、クリニック経営は患者さんに支えられているということ、そして患者さんたちは便利な社会の犠牲者でもあるということを痛感してから意識が変わりました。私のクリニックに来る患者さんは、ほかの医療機関で嫌な思いをしたり、うまくいかなかったりした人たちばかりです。すでに医者不信になっている患者さんに対して、いかに人間関係を作り、信頼していただけるかということに心を砕いています。

VOL.3 へ続く >>

西田 亙(にしだ・わたる)
プロフィール
糖尿病専門医、医学博士。広島県広島市出身。1988年愛媛大学医学部卒業。1993年愛媛大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。1994年愛媛大学医学部・第二内科助手。1997年大阪大学大学院医学系研究科・神経生化学助手。2002年愛媛大学医学部附属病院・臨床検査医学(糖尿病内科)助手。2004年愛媛大学医学部で医療面接の教育責任者を担当(~2012年)。2008年愛媛大学大学院医学系研究科・分子遺伝制御内科学(糖尿病内科)特任講師。2012年、にしだわたる糖尿病内科を開院、外来で日々医療面接を実施している。

「調剤薬局ジャーナル」2018年3月号より転載

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