セルフメディケーション シリーズ 対談: コーヒーの起源は「薬」だった

セルフメディケーション シリーズ 対談: コーヒーの起源は「薬」だった

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連載Vol.2 コーヒーの起源は「薬」だった 岡希太郎 先生

連載Vol.2 コーヒーの起源は「薬」だった 岡希太郎 先生

連載Vol.2 コーヒーの起源は「薬」だった 岡希太郎 先生

池田アイコン:
ここまでコーヒーの薬理効果や有用性についてお聞きしてきましたが、そもそもコーヒーはいつごろから飲まれるようになったのでしょうか。
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コーヒーに関する文献でもっとも古いものは、中東の医師アヴィセン(Avicenna)が11世紀頃に書き残した『アヴィセンナの書』であると言われていて、そこには「コーヒーは胃の薬である」と書かれています。当時は焙煎せずに、果実や種子をお湯で煮だして飲んでいたので、今のようなコーヒー特有の苦みや香りはありませんでした。とはいえカフェイン含有率は抜群ですから、イスラムの僧院では頭痛や吐き気止めの秘薬として珍重されていたようです。
池田アイコン
胃薬ですか? コーヒーはどちらかというと胃に負担がかかるものだと思っていました。
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日常的な胃の疾患は大きく2つあり、1つは胃酸過多で、胃もたれや胸焼け、酸っぱいゲップなどの症状があります。もう1つは胃酸不足で、食欲不振や膨満感などの症状があります。コーヒーが有効なのは、胃酸不足の場合です。近ごろドイツで行われた実験で、カフェインの苦みが胃酸の分泌を促すことがわかっています。食後のコーヒーには胃酸の分泌を促進して消化を助ける作用があるのです。ただし、胃酸過多の人が食前にコーヒーを飲むと、胃が痛くなるので避けたほうがいいでしょう。
池田アイコン
なるほど、昔の人は経験を通してコーヒーを薬として扱っていたのですね。それがある時から発がん性を疑われたなんて、とんだ濡れ衣ですよね(笑)。
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そうですね。でもそのおかげでコーヒー研究が進んだのですから「災い転じて福となす」と言えるのではないでしょうか。

VOL.3 へ続く >>

岡希太郎 先生(おか・きたろう)
プロフィール
1941年、東京生まれ。東京薬科大学卒業、スタンフォード大学医学部に留学し、薬化学と臨床薬理学を専攻、薬学博士(東京大学)。東京薬科大学名誉教授、日本コーヒー文化学会理事。著書に「臨床薬理学」(朝倉書店)、「なるほど くすりの原料としくみ」(素朴社)、「マンガ・珈琲一杯の元気」「珈琲一杯の薬理学」(以上、医薬経済社)、「毎日コーヒーを飲みなさい」(集英社)など多数。

調剤薬局ジャーナル」2018年5月号より転載

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