セルフメディケーション シリーズ 対談:「おいしく楽しく」血管から健康に

セルフメディケーション シリーズ 対談:「おいしく楽しく」血管から健康に

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連載Vol.2 「おいしく楽しく」血管から健康に 板倉弘重 氏(医学博士)

板倉弘重 氏(医学博士)

連載Vol.2 「おいしく楽しく」血管から健康に 板倉弘重 氏(医学博士)

池田アイコン:
ポリフェノール含有率が世界一高いチョコレートが、心臓の血管をしなやかにしたという研究があります。
西田アイコン
多くの研究がありますね。血管の硬さや柔らかさというのは、血管壁の内側にある内皮細胞と内膜、それに中膜の平滑筋の状態を指しています。内膜にコレステロールや酸化代謝物、石灰などの老廃物が溜まると、動きが悪くなります。それが、いわゆる硬化です。
池田アイコン
血管の傷害には「硬くなる」と「詰まる」があるということでしょうか?
西田アイコン
ええ。一つは、血管壁の内側にいろいろな不要な細胞が集まり、増えてくることによる硬化です。そこに石灰がこびりついたりして、さらに硬くなってきます。もう一つ多く見られるのは、血管の一番内側にある内膜にコレステロールや繊維が溜まって壁が肥厚することによる硬化です。内腔が狭まって血液の流れが滞るので、詰まりやすくなります。健康な血管は柔らかく、常に新しい細胞と入れ替わっていますが、壁が硬くなった血管では、血液に接している内皮細胞が傷つき、そこに血小板が付いたりして、血栓ができやすくなります。このような血管壁の傷に始まる動脈硬化は、10代から少しずつ見られます。
池田アイコン
言わば、分厚いぼろ着をまとった血管はもろいわけですね。
西田アイコン
そうですね。血管壁と同じようにコラーゲンを持っている骨や皮膚を想像してみてください。組織を支えるコラーゲンという線維状のタンパク質は、細胞が活発に入れ替わる間は健康ですが、酸化するとチョークのように硬くなって回復しにくくなります。骨なら、もろく壊れやすくなり、皮膚なら、こわばってきたり、シワができたりしますね。コラーゲン線維がフレッシュな状態であることは、血管壁においても大切なのです。
池田アイコン
最近、「血管年齢」という言葉もよく聞きます。
西田アイコン
血管のしなやかさを検査できるようになりましたね。体の組織は、だいたい一定の変化で年相応に硬くなっていきますが、実際は、同じ年齢でも、老化の進行の度合いは人によってかなり異なります。ですから、生物学的な体の年齢…老化の度合いを分かった上で、各人の病気を治すことが大事でしょうね。

VOL.3 へ続く >>

板倉 弘重(いたくら・ひろしげ)
プロフィール
医療法人社団IHL品川イーストワンメディカルクリニック理事長、国立健康・栄養研究所名誉所員、日本動脈硬化学会名誉会員。1961年に東京大学医学部を卒業後、沖中内科(沖中重雄先生率いる東京大学医学部附属病院第三内科)を経て、米・カリフォルニア大学サンフランシスコ心臓血管研究所に留学。1985年から96年まで国立健康・栄養研究所の臨床栄養部長を務める。現在はクリニックで臨床医をしながら、日本ポリフェノール学会理事長など複数の学会の役員をこなす。2006年に瑞宝双光章を受賞。かんき出版『最新の医学が解き明かす チョコレートの凄い効能』、主婦の友社『大丈夫!何とかなります 血糖値は下げられる』など、著書多数。おいしく楽しく動脈硬化を予防する高ポリフェノール食品としてチョコレートや赤ワインに着目し、その研究成果を社会に分かりやすく発信している。

「調剤薬局ジャーナル」2018年9月号より転載

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