セルフメディケーション シリーズ 対談:小児糖尿病と食事療法

セルフメディケーション シリーズ 対談:小児糖尿病と食事療法

  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4

連載Vol.3 コミュニケーションで大切なのは患者の気持ちを引き出すこと

川村 智行(小児科医、医学博士)

連載Vol.3 コミュニケーションで大切なのは患者の気持ちを引き出すこと

池田
薬剤師の役割について、いろいろな先生にお話を伺うと、医者とは違った角度と接点を持ってコミュニケーションすることが大切だと話してくださるのですが、実際現場では、時間的な余裕やスキルがなかったりして、なかなか難しい面があると聞きます。コミュニケーションのコツはありますか?
川村
実は私の妻が薬剤師なんです。現在は薬剤師としての仕事はしていませんが、二人でコミュニケーションのトレーナーとして、薬剤師の方に向けたトレーニングを行っています。私たちが教えているのは「モチベーショナル・インタビューイング」、日本語に訳すと「動機づけ面接」というもので、世界中で普及してきているコミュニケーション方法の一つです。
最近になってようやく、患者さんの話をしっかり聞いて、医療情報を得る「医療面接」の重要性が言われるようになってきて、大学でも習うようになりましたが、私たちの頃はまったくなかったので、コミュニケーションが苦手な人が多いと思います。上から目線でガーンと叱りつけるのが、昔の医療でしたよね(笑)。
池田
昔のお医者様は怖かったですから(笑)。
川村
動機づけ面接の基本的なスタンスは、本人が変わりたいという気持ちを引っ張り出してあげることなんです。
池田
患者さん自身の変わりたい気持ちを引き出すというのは、治療継続率にもつながってくるところですね。小児糖尿病のような病気のお子さんに対して、薬剤師の方ができることや、気をつける点はありますか?
川村
これも動機づけ面接のスキルなのですが、まずは頑張っていることを認めてあげることです。インスリン投与や面倒な血糖測定などをずっと本人が続けているということだけでも、「面倒くさいよね。よく頑張っているね」と認めて共感してあげること。次に、どんなことに困っているかを聞く。まずはその二つが大切ではないでしょうか。
池田
子どもさんの病気は親も切実です。薬剤師の方と話す機会が多い親御さんに対しては、どのように接したらよいでしょう?
川村
それも一緒で、「お母さん、頑張ってますね」と言ってさしあげるのが大切だと思います。24時間、本人以上に食べるものやいろいろなことに気を遣い、努力している親御さんがたくさんいます。その姿を見ているから、子どもたちも頑張れるんですよ。

VOL.4 へ続く >>

川村 智行(かわむら・ともゆき)
プロフィール
医学博士。大阪市立大学大学院発達小児医学教室講師。1991年大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、カナダ国立カルガリー大学ジュリア・マックファーレン糖尿病研究所研究員を経て2007年より現職。専門は小児内分泌(糖尿病)、小児腎臓病。糖尿病の食事療法であるカーボカウントの第一人者として、その指導と普及に取り組んでいる。小児糖尿病サマーキャンプ(日本糖尿病協会主宰)には毎年参加。著書に『糖尿病のあなたへ かんたんカーボカウント―豊かな食生活のために』(医薬ジャーナル社)などがある。

「調剤薬局ジャーナル」2019年3月号より転載

【 TOPページ へ 】