セルフメディケーション シリーズ 対談:小児糖尿病と食事療法

セルフメディケーション シリーズ 対談:小児糖尿病と食事療法

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連載Vol.4 患者さんのために、医者と薬剤師が協力し合える関係に 川村 智行  先生 (小児科医、医学博士)

川村 智行  先生 (小児科医、医学博士)

連載Vol.4 患者さんのために、医者と薬剤師が協力し合える関係に

池田
今後は薬剤師の方たちにも、カーボカウントのことをもっと知っていただければいいですね。
川村
今の医師法では認められていませんが、将来的にはインスリンの調整方法まで薬剤師の方の仕事にしていいと思っています。今はインスリンを処方する時に、医者が打つ量を指示しないといけないのですが、カーボカウントでは患者さん自身が決めるので、医者が何単位打ちなさいと決めるものではないのです。しかし、カーボカウントをご存知ない薬局さんからは、何単位か指示をくださいと問い合わせがきます。
池田
すべてを理解するのは難しいとしても、興味を持ってほしいと思います。関心を持っていただければ、患者さんに対する理解もまた違ってきますよね。
川村
その通りです。糖尿病の治療方法はどんどん進化していて、今後、少なくとも12年以内に全くちがうものになっている可能性もあると思います。実は私も今、これから実用化される測定器を腕に着けているんですよ。皮下に糖センサーを着けており、スマホに無線でデータが送られます、つまり常時スマホで血糖値変化がわかるのです。本人だけでなくご家族が遠隔で見られるようになったり、アラームが鳴ったりします。 このように治療法や食事療法は進化し続けているので、薬剤師の方々にも少しでも興味を持ってもらえるといいですね。
池田
最後に、薬剤師の方にメッセージをお願いします。
川村
今までもそうでしたが、薬剤師は医者と患者さんをつなぐ重要な役割を担っています。処方箋をもとに、患者さんとの最後のつなぎ目になる重要な部分です。患者さんの思い、考え、状況をしっかり聞き出していただいて、お互いにどういう改善策があるかを一緒に考えていけるような、そんな薬剤師さんであってほしいと思います。
池田
やはり聞く力というのが大切なんですね。
川村
そうです。医者の仕事も同じで、重要なのは聞く力。情報提供は必要ですが、それは12分の1くらいで、残りは患者さんが何を考えているか感じているのか、訴えを聞くことのほうが大切。どの治療を選ぶか、最低限のアドバイスはしますが、決めるのは本人で、医療者ははそれを手伝う存在なんだろうと思います。
池田
どう生きていくかという主導権を、患者さん自身に持ってもらいたいという先生の思いが伝わってきました。本日はありがとうございました。

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川村 智行(かわむら・ともゆき)
プロフィール
医学博士。大阪市立大学大学院発達小児医学教室講師。1991年大阪市立大学大学院医学研究科卒業後、カナダ国立カルガリー大学ジュリア・マックファーレン糖尿病研究所研究員を経て2007年より現職。専門は小児内分泌(糖尿病)、小児腎臓病。糖尿病の食事療法であるカーボカウントの第一人者として、その指導と普及に取り組んでいる。小児糖尿病サマーキャンプ(日本糖尿病協会主宰)には毎年参加。著書に『糖尿病のあなたへ かんたんカーボカウント―豊かな食生活のために』(医薬ジャーナル社)などがある。

「調剤薬局ジャーナル」2019年3月号より転載

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