次世代型薬局「薬局3.0」とは - 4.病院依存の現状を打破し、「薬局3.0」を目指す

次世代型薬局「薬局3.0」とは - 4.病院依存の現状を打破し、「薬局3.0」を目指す

連載Vol.4.病院依存の現状を打破し、「薬局3.0」を目指す

狭間研至先生 (医師 / ファルメディコ株式会社代表取締役社長)

連載Vol.4.病院依存の現状を打破し、「薬局3.0」を目指す

池田
簡単にいい場所に店を出せるわけではないですものね。
狭間
こんなことがありました。薬局で青汁の販売をしていたのですが、近くの医療機関の先生から、そういうのは好きじゃないからやめてほしいと言われたんです。すぐにやめますと答えたあと、考えさせられました。たしかに、患者さんを連れてきてくれるのは医療機関側なわけで、僕たちはその近くに店を出して、商売をさせてもらっています。いわば医者の意向は絶対となりがちで、この状況は問題だと改めて思いました。似たようなことがいくつもあり、このままではだめだと。
医療機関側に経済的に依存してしまっているのが問題なのです。その医療機関から1メートルでも近いところに別の薬局ができたら、もううちには患者さんが来なくなってしまう──こんな医療機関依存の状況を打破するためには、立地ではなく、人で選ばれるようにならなければいけない。そう気づいた時、そこに在宅訪問の仕事がピタッとはまったんです。これなら薬局がどこにあってもいいし、薬を受ける側もサービスのいいところを選ぶようになりますよね。以来、積極的に取り組んできました。
池田
そこから先生が目指す次世代の薬局につながるんですね。
狭間
2006年に薬局の30周年パーティーをした時の社長挨拶で、「薬局は立地依存から人材依存にシフトしていく」と告げました。昔、母が店を始めた頃にやっていたような、主にOTC薬品を扱う町の薬屋さんが第一世代、医薬分業の流れから始まった門前型の調剤薬局が第二世代とすると、僕たちは第三世代の薬局、つまり「薬局3.0」を目指すと宣言したんです。
池田
「薬局3.0」を宣言されて、皆さんの反応はいかがでしたか?
狭間
その時来てくださった来賓の方にはすごくウケたので、よかったと思っていました。ところが、そのあとに辞表を持ってくる人がいっぱい出てきて…。
池田
え、辞表ですか?
狭間
「なぜ今の門前型の薬局がいけないのか、社長の言っている意味がわからない」「私たちは一生懸命働いています。なぜ今のままではだめなんですか?」と、キャリアの長い薬剤師さんたちから声があがりました。
池田
自分たちのことを否定されたと思ってしまったんですね。
狭間
僕のやり方や言い方にも問題があったと思います。根回しもせず、いきなり宣言してしまったので…。実際にたくさん人が辞めていきました。管理薬剤師がいなくなってしまい、7店舗あったうち、2店舗を閉めたんですよ。店を閉めたら外来の処方箋が来なくなっておしまいだろうと思っていたのですが、違いました。在宅訪問をしていたところの処方箋を別の店舗で受けることができたので、そうはならなかった。つまり、人は減ったけれど仕事は残ったという状況になったのです。
池田
それは忙しくなりますね。
狭間
そうなんです。残った人間だけで対応しなければならず、これは困ったと思いました。すると社員の一人が、「社長、患者さんが待っています! なにがなんでもやり抜きますから!」と言ってくれて。本当にみんな頑張ってくれて、乗りきることができました。感激しました。そこから僕も、今まで以上に本気でやろうと腹をくくりました。
池田
それまではどこか遠慮があったのかもしれないですね。
狭間
そうですね。薬剤師さんに自分の考えを主張してもそんなに期待できないかもしれないと、どこかで思っていたところがあったけれど、ものすごい気迫で働いてくれる姿を見て、胸が熱くなり、自分にも気合を入れました。
狭間研至先生

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狭間 研至(はざま・けんじ)
プロフィール
ファルメディコ株式会社代表取締役社長、医師、医学博士。1969年大阪生まれ。1995年大阪大学医学部を卒業後、大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院(現 大阪府立急性期・総合医療センター)、宝塚市立病院にて外科・呼吸器外科診療に従事。2000年大阪大学大学院入学、異種移植をテーマとした研究・臨床を行う。2004年より薬局経営に従事。現在は医師として診療を行いながら、一般社団法人日本在宅薬学会の理事長として薬剤師生涯教育や薬学教育に携わるなど、新しい医療環境の実現に向け幅広い活動を行う。著書に『薬剤師3.0 地域包括ケアを支える次世代型薬剤師』(薬事日報社)、『薬剤師のためのバイタルサイン』(南山堂)など多数。

「調剤薬局ジャーナル」2019年9月号より転載

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