「そうだ、薬局へ行こう!」となる店づくりを 株式会社クラスAネットワーク会長 橋本 薫

「そうだ、薬局へ行こう!」となる店づくりを 株式会社クラスAネットワーク会長 橋本 薫

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連載Vol.2.あるべき未来を見せてエンカレッジ(鼓舞)する

株式会社クラスAネットワーク会長 橋本 薫

連載Vol.2.あるべき未来を見せてエンカレッジ(鼓舞)する

池田
薬局業界初の試みだったと思いますが、何から着手されたのですか?
橋本
先ほどまずいという言葉を使いましたが、リソースが足りないことがとりわけ問題だと思いました。リソースとは、ヒト・モノ・カネ。個人経営の薬局をバックアップする仕組みを作らないと早晩、たちゆかなくなるだろうと危機感を覚えたんです。そこで企画書を書いてプレゼンし、医薬品卸しのメディパルホールディングスが共感してくれて一緒に動くことになりました。「いつ、誰がやるか」というタイミングだったのです。「よし、やろう!」となったら、あとは早かったですね。
経営のバックアップ、薬剤師の採用、企業との連携、フォーラムやセミナーの開催、商品の販売・流通促進——今の保険薬局にはイノベーションが必要だということを説いて全国を回って話しました。年間40〜50回くらいかな。処方箋に基づいた調剤だけでは限界があると、みんなどこかでわかっている。ならば「新しい薬局の未来をどう見せるか」。私はそれを話し続けました。
マイケル・ポーター(ハーバード大学経営大学院教授。経営学者)は共通価値というコンセプトを説いています。経済的価値を生み出しながら、社会的ニーズに応えることで社会的価値も生み出すという概念ですが、保険薬局にもまったく同じことが言えます。社会的ニーズとは「その街の患者さんたちの健康を守る。そして、そのためのサポートを惜しまない」。同時に、利益も上げなくてはいけない。クラスAはそのデザインをするのが役目だと思っています。ここで言うデザインとは「問題解決」という意味です。
橋本薫先生
池田
セミナー活動とは一種の啓発ですよね。薬剤師さんたちに明るい未来の姿を見せることで、薬局の方も勇気づけられますよね。
橋本
はい。薬機法の改正や医療費削減、超高齢社会など、大きなうねりが起こっている業界で、保険薬局の役割をもう一度、ひとりひとり考え直す必要があります。処方箋を持って薬局に来る人は健康になりたいと思って、やってきます。であれば病気の時だけでなく、常日頃から薬局が患者さんのヘルスケア全般をサポートするような取り組みをすればいい。マーケティング的には「患者の生涯顧客化」と言いますが、その弛まぬ取り組みを続けていれば保険薬局は地域のヘルスケアを担うキーステーションになり得ると考えました。
スティーブ・ジョブスにも影響を与えたパーソナルコンピュータの父、アラン・ケイは「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」と言っています。厳しい社会情勢、社会保障の中、未来を予測し、薬局の未来を創ることに私は力を注ごうと思いました。

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橋本 薫(はしもと・かおる)
プロフィール
1949年生まれ。1975年武蔵野美術大学産業デザイン学部卒業。1990年株式会社サン・アド取締役企画開発本部長を経て、2004年に株式会社エムエフディ、2006年に株式会社クラスAネットワークを設立。これまでに、『ハーゲンダッツ』『カールスバーグ』、『ニューズウィーク』のブランド構築、『サブウェイ』サンドイッチのFCシステム構築、JR東日本の『GALA湯沢スキー場』、JR西日本の大阪駅『ギャレ大阪』プロデュース、昭和大学病院・順天堂医院などの緑化プログラム等を手がけた。現クラスAネットワークならびにエムエフディ会長。武蔵野美術大学講師も務める。

「調剤薬局ジャーナル」2020年3月号より転載

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