喉のケアと家庭薬で国民の健康に寄与したい 龍角散 代表取締役 藤井 隆太

喉のケアと家庭薬で国民の健康に寄与したい 龍角散 代表取締役 藤井 隆太

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連載Vol.1.200年の時を越え、進化し続ける老舗の心意気

龍角散 代表取締役 藤井 隆太

連載Vol.1.200年の時を越え、進化し続ける老舗の心意気

池田
本日はありがとうございます。御社は、喉を守って200年という類いまれなる歴史をお持ちです。まず、ロングセラーの秘訣からお聞かせいただけますか?
藤井
古いけれど新しい、ということですね。環境やライフスタイルは変わるので、昔どおりにやっていては世の中から置いてけぼりになります。変化に応じて商売のやり方も変えていかなければなりません。もう一つは、ポリシーです。江戸時代、喘息で苦しむ秋田藩主のために医師だった先祖が苦心して処方したのが『龍角散』の起源です。「当社が在ることで皆さんがどれだけ健康になれるか」というのが、世代を超えて受け継ぐべき当社の存在意義なのです。
藤井隆太氏
池田
常に進化し続けている御社の商品はオシャレですね。『龍角散ダイレクト』シリーズも、龍角散パウダーの20g缶のサイズ感も可愛いです。
藤井
清潔感のあるアルミ容器を考案したのは先祖で、量産型にしたのが祖父や父です。世代ごとに経営革新を繰り返して今があります。私が社長になった25年前は売上40億円に借金40億円、商品も軒並みランキング外という絶望的な状況でした。悩んだ末に、原点に立ち戻り、喉に特化した企業を志したことで、利益率がぐんと上がり、社員数約80人の規模なので利益を広告費に回すことができ、経営が好転し始めました。未来のマーケット創出に注力した結果、当社製品はあまり他社と競合しないんですよ。
池田
服薬補助ゼリーは、まさに、どこにもなかった商品ですね。
藤井
カテゴリー自体がなかったから、安全性の証明など大変でしたよ。当社の売上200億円のうち服薬補助ゼリーの売上は12億円程度で、それ以上の金額を広告や学会発表に費やしています。儲かりもしないのに続けるのは、これがないと命がつながらない方々がいるから。東日本大震災の時は断水した病院に在庫3万個を送りました。こうして人様の命を救うことができるメーカーになったからこそ、店頭で選んでいただけるのでしょう。利益以上に、お客様の健康や安心・安全が大事という一貫したポリシーがないと、永くビジネスはできません。

VOL.2 へ続く >>

藤井 隆太(ふじい・りゅうた)
プロフィール
江戸時代にルーツを持つ株式会社龍角散の八代目。小林製薬で2年、三菱化成工業(現・三菱ケミカル)で8年勤務の後、病に伏した父親の頼みで40億円の負債にあえぐ家業を継ぐ。1995年から代表取締役社長。桐朋学園大学卒のフルート奏者でもあり、音楽家ならではの感性で、同社のオンリーワンである龍角散パウダーの強みを推進し、「のどの専門メーカー」として経営の立て直しに成功、老舗の暖簾を守った。商工会議所議員として、厚生労働省社会保障審議会医療保険部会の委員を7年連続で務める。音楽家としては、2020年7月にバルカン室内管弦楽団との競演を予定。その語りは軽快な江戸っ子調で、聞く者を惹きつける。

「調剤薬局ジャーナル」2020年5月号より転載

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