喉のケアと家庭薬で国民の健康に寄与したい 龍角散 代表取締役 藤井 隆太

喉のケアと家庭薬で国民の健康に寄与したい 龍角散 代表取締役 藤井 隆太

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連載Vol.2.いつも身近にある「家庭薬」の役割とは

龍角散 代表取締役 藤井 隆太

連載Vol.2いつも身近にある「家庭薬」の役割とは

池田
『龍角散の のどすっきり飴』は、祖父が昔、居間でテレビを見ながらなめていた龍角散パウダーの香りがします。懐かしさと同時に「これは効く!」と感じさせるのは、さすがだと思います。
橋本
この飴には、医薬品にならない範囲で龍角散パウダーの成分を練り込んでいるのです。効果感を多くの方に認知していただけて、25%のシェアとなっています。日常ではのど飴を舐めていただき、少し喉の具合がおかしい時は医薬品の龍角散ダイレクトや龍角散パウダーを、それでも駄目なら受診するというふうに、段階的にセルフメディケーションに役立てていただきたいですね。
藤井隆太氏
池田
家庭薬には処方薬とは違う役割があるということですね。
橋本
そうです。社長に就任した当初、いかにも古臭い龍角散パウダーをなぜ買っていただけるのかが疑問で、グループインタビューを実施しました。そこで、妊娠中でも大丈夫な薬と産婦人科の先生に紹介された、服用する薬が多いので強い咳の薬を飲みたくない、などというご愛用者に出会いました。改めて自社製品の価値に気づかされたのです。家庭での置き場所も象徴的でした。皆さん薬箱ではなく、食卓や部屋の机の上に置いてあるそうです。それだけ家庭薬というのは身近な存在なんですね。
龍角散パウダーを「血中に入らず喉の粘膜だけケアしてくれるし、ノンシュガーなのもいい」と褒めてくださる声を聴いて、良いところを伸ばせばいいのだと思い、用途開発を進めました。"祭りののどにも、龍角散"というキャッチコピーを考えたのは私です。祭り以外にも、喉の調子がおかしい時や花粉やPM2.5が多い時、コンサート会場などで咳をしてはいけない時などにどうぞ、と広告を打ちました。
巨大マーケットを持つ風邪薬や胃薬に参入しようという意見も社内にありましたが、危ないと思いましたね。むしろ私は、「独自の喉のマーケットをしっかり守る」と決断し集中しました。そして、セルフメディケーションという考えを菓子業界に持ち込むべく新規ルートを開拓し、コンビニやスーパーに、のど飴を届けるように奮闘しました。おかげさまで、縮小していた日本の鎮咳去痰剤マーケットは今や、戦後最大規模ですよ。

VOL.3 へ続く >>

藤井 隆太(ふじい・りゅうた)
プロフィール
江戸時代にルーツを持つ株式会社龍角散の八代目。小林製薬で2年、三菱化成工業(現・三菱ケミカル)で8年勤務の後、病に伏した父親の頼みで40億円の負債にあえぐ家業を継ぐ。1995年から代表取締役社長。桐朋学園大学卒のフルート奏者でもあり、音楽家ならではの感性で、同社のオンリーワンである龍角散パウダーの強みを推進し、「のどの専門メーカー」として経営の立て直しに成功、老舗の暖簾を守った。商工会議所議員として、厚生労働省社会保障審議会医療保険部会の委員を7年連続で務める。音楽家としては、2020年7月にバルカン室内管弦楽団との競演を予定。その語りは軽快な江戸っ子調で、聞く者を惹きつける。

「調剤薬局ジャーナル」2020年5月号より転載

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