喉のケアと家庭薬で国民の健康に寄与したい 龍角散 代表取締役 藤井 隆太

喉のケアと家庭薬で国民の健康に寄与したい 龍角散 代表取締役 藤井 隆太

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連載Vol.3.皆保険制度の課題とセルフメディケーション

龍角散 代表取締役 藤井 隆太

皆保険制度の課題とセルフメディケーション

池田
家庭薬は身近だからこそ安全を考えて工夫された、ちょうどいい塩梅のものなんですね。
藤井
はい。家庭薬は生活の一部ですから強い化学合成品ではありません。在宅医療の現場でも、抵抗力の弱い高齢者のために、医療用医薬品より穏やかな家庭薬が選ばれることがあります。上手に使えば非常に役立つものなのです。
日本の課題として、診療履歴や服薬履歴が一元管理されていません。今、マイナンバーと履歴を紐づけして照合できる仕組みが検討されていますが、私は、そこにOTC医薬品の履歴も入れるべきだと思いますね。医療用と同じ成分が含まれる以上、必要な情報だからです。OTC医薬品はサプリメントと違ってデータベースも説明文書もあり、国が決めた基準内で成分や効き目を明記していますから、一元化が実現するまでは、説明文書を「お薬手帳」にはさんで、何をいつ飲んだか記録しておいてほしいのです。
池田
飲んだ薬がつまびらかになれば、ポリファーマシー(多剤併用による副作用)防止になりますね。
藤井
ええ。服薬補助ゼリーに関するお問い合わせを見ると、複数の医療機関から何十錠も処方されている方がいます。絶対に飲むべき薬が大きな錠剤で飲みにくいからと服用されず、副作用防止の小さな整腸剤や鎮痛剤だけ飲んでいたりして、恐ろしくなりますよ。「かかりつけ医」があちこちにいる方は、お薬手帳だって何冊あるか分かりません。
皆保険制度も課題含みです。必要最低限の医療を提供する目的だったものが、今や40数兆円もの負担となり、税金で補填しつつ海外から高い薬を買うありさまです。窓口支払い額が安いと言っても将来の先取りですから、本当は安くないんですよ。日本の医療用医薬品とOTC医薬品の比は9対1です。端的に申し上げて、保険医療に頼りすぎなのです。
池田
軽症の場合は、まずはセルフメディケーションが求められると?
藤井
そうです。不摂生が原因でも少ない負担で治してもらえる仕組みは、結局は、自ら健康になる意欲を国民から奪うことになるのではないでしょうか。痛く苦しい思いをするのは自分ですし、壊した機能は元に戻りません。食べ物に気を付けて無茶をせず、具合が悪ければ家庭薬で様子をみつつ、医師や薬剤師と連携し、親にもらった自分の体を上手に使って長持ちさせるのが、セルフメディケーションです。
池田
セルフメディケーションの拠点となる調剤薬局の方に、お伝えしたいことはありますか?
藤井
お一人ずつ顔を見て、お客様が欲していることを察知できる大事な立場にいらっしゃると思います。我々も医薬品メーカーとして説明や広告に努めていますが、服薬補助ゼリーをご存知なかったお客様から、「なぜ、こんないいものを知らせないのか」とお叱りを受けることもしばしばです。薬局の方には是非、生活者の良き相談相手になっていただき、もし薬が飲みにくいというご相談があったら、こんなものもありますよと一言お伝えいただけたら有り難いです。
藤井隆太氏

プロのフルート奏者でもある藤井社長が取材終了時に演奏してくださった(東京都千代田区 龍角散にて)

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藤井 隆太(ふじい・りゅうた)
プロフィール
江戸時代にルーツを持つ株式会社龍角散の八代目。小林製薬で2年、三菱化成工業(現・三菱ケミカル)で8年勤務の後、病に伏した父親の頼みで40億円の負債にあえぐ家業を継ぐ。1995年から代表取締役社長。桐朋学園大学卒のフルート奏者でもあり、音楽家ならではの感性で、同社のオンリーワンである龍角散パウダーの強みを推進し、「のどの専門メーカー」として経営の立て直しに成功、老舗の暖簾を守った。商工会議所議員として、厚生労働省社会保障審議会医療保険部会の委員を7年連続で務める。音楽家としては、2020年7月にバルカン室内管弦楽団との競演を予定。その語りは軽快な江戸っ子調で、聞く者を惹きつける。

「調剤薬局ジャーナル」2020年5月号より転載

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