- 池田
- 私も父をガンで亡くしており、闘病生活の大変さを間近で見てきました。ガン患者の多くが痛みと闘っていますが、先生のおっしゃる「緩和ケア」は一般的なイメージよりも深く広い意味で捉えていらっしゃるような気がします。
- 横内
- 緩和ケアは痛みをとることももちろんですが、患者さんやご家族が心穏やかに過ごせるように日常的にサポートすることが大切だと思っています。そういう治療をするのが自分の仕事だと。昔、ホスピスとして有名な聖隷浜松病院に見学に行ったことがありますが、とても良い病院でした。ガンで亡くなった患者さんの家族がグループで支援しているのです。ガンで辛い思いをしている患者さんはとても癒されるでしょう。
- 池田
- 先生のご本を読ませていただきましたが、ガンとわかった時から、真実を知らせることが緩和ケアの一つのステップとして必要ということでしょうか。
- 横内
- かつて、ガンは本人に告知しないのが一般的でした。しかし今は告知するケースがほとんどです。ただ、治る病になってきたとはいえ、告知された患者さんやご家族の心は穏やかではありません。ガンで亡くなる確率が下がったとはいっても、死に通じる病であることもまた事実です。ガンを告知された患者さんが死ぬ前に自殺する可能性は通常の約24倍にも上るという、コホート研究(cohort study)もあるくらいです。
ですから緩和ケアは診断の直後から行われるべきです。同時に、患者さんへの家族からのアプローチもとても大切です。患者さんがどのようなケアを望んでいるのか、コミュニケーションをとることで、ご本人のネガティブな感情を掬い取ってあげることができるでしょう。病気になった人の気持ちを大切にしてあげる……家族の力は大きいですよ。
- 池田
- 薬には多少なりとも副作用がありますが、ガンの治療薬も例外ではありませんよね。先生が院長を務めておられる横内醫院では、漢方を併用して副作用を抑える治療も行うのでしょうか。
- 横内
- 現代医学である西洋医学にも良いところはたくさんあります。貧血になったら輸血をするとか、腹水が溜まったら抜くとか、そういう治療は漢方では難しいですから。私は西洋医学の処方に加えて、漢方などの治療を併用しています。
針治療もします。誰でも自分の病気を治すツボがありますから。そういった治療でいかに苦しみをとってさしあげるかということを念じています。
- 横内正典(よこうち・のりまさ)
プロフィール - 1944年、中国旅順市生まれ。71年、弘前大学医学部卒業、函館市立病院外科に勤務。73年、弘前大学医学部第二外科学教室に入局し、消化器癌を研究。82年、青森県町立田子病院長として赴任。94年、漢方と気功による癌治療を実践すべく東京都東中野に横内醫院を開業、全国から末期癌の患者がひっきりなしに訪れることで知られる。医療法人社団心醫会 横内醫院院長。著書に『究極の癌治療』(光雲社)、『絶望を希望に変える癌治療』『抗癌剤の副作用で苦しまないために』(たま出版)等、多数。
「調剤薬局ジャーナル」2020年9月号より転載
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