セルフメディケーション シリーズ 対談:真のセルフメディケーションの浸透を目指して

セルフメディケーション シリーズ 対談:真のセルフメディケーションの浸透を目指して

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連載Vol.3 健康をたぐり寄せるのは自分 医薬情報研究所/(株)エス・アイ・シー医薬情報部門責任者 堀 美智子氏(薬剤師)

医薬情報研究所/(株)エス・アイ・シー医薬情報部門責任者 堀 美智子氏(薬剤師)

連載Vol.3 健康をたぐり寄せるのは自分

Q:
セルフメディケーションを推進するため、新しいスマホ用アプリを総合プロデュースされたそうですね。
A:
はい。薬剤師はもちろん、一般の方も活用できる「スマ的健康ライフ」というアプリです。どんなに伝えたいことがあってもエビデンスを示せないと説明できないので、患者さん対応時に即座に正しい情報を引き出せるツールを作りました。セルフメディケーションに役立てていただくため、一般の方にも無料で公開中です。薬剤師や薬局の背後に大きな図書館があるとすれば、その雑多な情報をある程度評価して取捨選択し、棚ごとにきちんと整理したのが、このアプリです。
スマホアプリのトップ画面スマホ用アプリ『スマ的健康ライフ』
このアプリでは自宅近くのAED(自動体外式除細動器)も検索可能。「年間約7万6000人が亡くなる心停止の75%は自宅で起きているので、ご家族がすぐにAEDを使えれば救命できる可能性が高い。ヘルスリテラシーを高めることは、ご自身やご家族の健康を守る上で非常に大切」(堀先生)
Q:
薬剤師の目で信用に足る情報をそろえてくださると、効率が良いですね。ところで、薬局で多くの方と接していて、一般に知られていないと思う「食」の知識はありますか?
A:
一つは、薬と食品との食べ合わせです。例えば、ACE阻害薬やARBと言われるグループの血圧を下げる薬を服用中の方は、血液中のカリウムが上がりすぎる可能性があります。野菜も野菜ジュースもカリウムを多く含むので注意が必要です。野菜は、一度ゆでこぼしてカリウムを除いてから食べるようにしたほうがいいかもしれませんが、水溶性ビタミンも同時に失われていますので、ビタミン類を補充する必要があります。それから、「難消化性デキストリン」入りの飲料は、有害作用が出たりしないように、またその機能をフルに活用するためにも、ちゃんと目安量を守る必要があります。「1日の摂取目安量は1日に一回1本」と表示があるのは、お腹が緩くなってしまうから。「医薬品を服用している場合は、医師・薬剤師に相談してください」とも書いてあります。小さい字は皆さん読まないので、飲み過ぎて下痢になり、処方箋を持っていらっしゃる方まで出てきます。また、ネット情報も要注意です。例えばサプリメントを検索すると上位は宣伝ばかり。評価能力があれば即座にスキップできますが、たいていは上のほうの情報を読んで、同じような内容なら信じてしまいますよね。だからこそ、「自分の健康は自分で守る」という意識と同時に、正しい情報にアクセスしやすい仕組みを広げたいと思ったのです。

取材した薬局で、一人のお客さんを丁寧に長時間接客していた長男の正隆さん。まさにセルフメディケーションのサポート役としてご活躍です。最後に対談に加わっていただきました。

Q:
あるテレビ番組で「ドクターズチョコレート」が紹介された後、弊社の電話がパンクするほど反響がありました。その時に出演してくださったのが正隆さんです。ありがとうございました。薬剤師としてご両親の薬局にお勤めですが、セルフメディケーションについては、どのようにお考えですか?
A:
(正隆さん)「セルフメディケーション」という言葉だけが一人歩きしている印象です。「セルフ」という響きから、全部を自分一人でやることと解釈されがちですが、違います。冬は、気圧や気温の変化で頭痛が起こりやすい、血圧も高くなりがちですが、ある方は、血圧に影響が出る可能性があるロキソニンという市販の痛み止めを独断で飲み続けて、高血圧が継続していました。薬剤師は影響の出ない痛み止めをご提案できますし、薬が必須とも限りません。体のストレッチだけだっていいわけです。予防も含めてセルフメディケーションですし、ご自分で率先して薬局に相談に来ることだけでも、すでにセルフメディケーションです。処方箋が無くても薬局はご利用いただけます。道しるべとなるようなアドバイスをするのが僕らの仕事ですから、ぜひお気軽に声をかけてください。

[取材日 2016.11.16]

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堀 美智子(ほり・みちこ)
プロフィール
医薬情報研究所/(株)エス・シ・シー医薬情報部門責任者。1994年に薬剤師の夫や帝京大学医薬情報室に勤務していた仲間と東京都八王子市で株式会社エス・アイ・シーを設立し、取締役に就任。情報の種を撒く会社として、書籍やデータベースによる医薬情報提供等を行う。ラジオ番組「健康ネットワーク」(ラジオNIKKEI)には、パーソナリティとしてレギュラー出演。月刊誌『調剤と情報』(じほう)など複数の専門誌に記事を連載。2017年初頭にスマホ用アプリ「スマ的健康ライフ」を発表、セルフメディケーションの普及を推進している。同社は薬局2店舗(公園前薬局、公園前薬局暁店)も経営。社員約20人の半数以上を薬剤師が占めるという、卓越した会社である。

医薬情報研究所/(株)エス・アイ・シー
https://www.sic-info.co.jp

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