- 西田先生は、糖尿病患者さんの口腔ケアの重要性を提唱していらっしゃいます。内科医が口腔ケアに取り組まれるようになったきっかけをお聞かせください。
- 今から8年ほど前、私自身が歯周病患者でした。「医者の不養生」そのものの生活で、歯みがきは1日に1度だけ、歯石は溜まり、口臭はひどく、りんごをかじると血が出ていたほど。でも痛みがあるわけでもないので、あまり深刻にとらえていませんでした。ある時、愛媛大学と愛媛県歯科医師会が共同で臨床研究を行うことになり、この機会に自分の歯周病も治そうと治療を受け、それがきっかけで、口腔と全身がいかに繋がっているかということがわかったのです。
- 歯科医師さんたちとの出会いがきっかけで、歯周病治療に取り組まれたのですね。具体的にはどのような口腔ケアをされたのですか。
- まず、食後の歯みがきとフロスを習慣化しました。すると夜食も食べなくなりました。夜寝る前に歯みがきしたのに口の中を汚したくないですからね。そうしたら血糖値が下がり、血圧が正常になり、ひどい不整脈も消えました。運動を心がけるようになって、92kgあった体重が18kg減りました。歯周病が治ると、身体だけでなく、生活、いえ、私の人生が変わったのです。口腔ケアの重要性を身にしみて感じ、まだまだ多くの人がこの事実を知らない現状に、「なんとかしなければ!」という危機感、使命感を持ちました。
- おっしゃるとおり、口腔トラブルの仕組みをきちんと理解できている人は少ないかもしれません。理解しないままに、歯科治療に対して「痛かった」「機械音が嫌」「行きたくない」というネガティブな気持ちになってしまうんですよね。
- そうなんです。口臭の原因は口の中の細菌であり、歯周病は細菌感染症の1つだということを、患者さんにきちんと説明することがとても大切だと思います。そして、医学部や薬学部でも歯科の知識を教えるべきです。「もし自分が歯周病になったら、結婚相手にも感染する可能性がある。奥さんの歯周病から胎児の早産や死産のリスクもでてくる」といったことを知っておく必要があります。
- 西田 亙(にしだ・わたる)
プロフィール - 糖尿病専門医、医学博士。広島県広島市出身。1988年愛媛大学医学部卒業。1993年愛媛大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。1994年愛媛大学医学部・第二内科助手。1997年大阪大学大学院医学系研究科・神経生化学助手。2002年愛媛大学医学部附属病院・臨床検査医学(糖尿病内科)助手。2004年愛媛大学医学部で医療面接の教育責任者を担当(~2012年)。2008年愛媛大学大学院医学系研究科・分子遺伝制御内科学(糖尿病内科)特任講師。2012年、にしだわたる糖尿病内科を開院、外来で日々医療面接を実施している。
「調剤薬局ジャーナル」2018年3月号より転載
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