セルフメディケーション シリーズ 対談:「おいしく楽しく」血管から健康に

セルフメディケーション シリーズ 対談:「おいしく楽しく」血管から健康に

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連載Vol.4 糖尿病専門の内科医が語る口腔ケアの重要性 にしだわたる糖尿病内科 院長 板倉 亙

にしだわたる糖尿病内科 院長 板倉 亙

連載Vol.4 調剤薬局ができる呼びかけとは

板倉アイコン
チョコレートで注意したいのは砂糖の量です。タンパク質が糖化してできるAGE(終末糖化産物)は、血管を劣化させますからね。AGEは豆類を強く焙煎したり、砂糖たっぷりの食品を加熱したりしてもできます。珈琲や紅茶にも多いですが、小腸あたりである程度ブロックされるので、全てが吸収されるわけではありません。でも体内で作られるAGEもあるので、やはり摂取を控えたほうが無難でしょう。
池田アイコン
「糖化は老化」と言いますものね。高カカオのチョコレートはポリフェノール含有率が魅力ですが、苦いのがネックです。弊社製品は砂糖を一切入れず、マルチトールでおいしく仕上げました。
板倉アイコン
脳腸連携を考えれば、「おいしさ」は大切です。延髄から出て腸管に達している迷走神経があったり、腸管からのホルモンが脳を制御していたり、脳と腸は密接に関係しているので、双方に働きかけるチョコレートは「健康のカギを握る食品」と言えそうですね。
池田アイコン
独特な香りでエンドルフィンの分泌を促したり、テオブロミンという成分でセロトニンの働きを助けたり、幸せホルモンと呼ばれる脳内物質とも深いつながりがあるようです。
板倉アイコン
ええ。それも大切な要素です。私が長寿研究でチョコレートに着目したのも「おいしく楽しく、食べ物で長生きできないだろうか」と考えたことが、きっかけの一つでした(笑)。制限食よりも、おいしいものを食べながら健康長寿を目指すのが良いと思いましてね。
池田アイコン
激しく同意します! では最後に、セルフメディケーションについてアドバイスをお願いします。
板倉アイコン
「薬食同源」と言うように、食品と薬には共通点が多く、組み合わせによって、その効果もかなり変わってきます。例えば大根、キャベツ、ブロッコリー、ケールといったアブラナ科の植物に含まれるイソチオシアネートという成分は、体内の薬物代謝酵素系を活性化させます。また、チトクロームP450という第一相の酵素反応の後、第二相のグルタチオン抱合反応で水に溶けやすくなって体に効く薬は、同じ酵素系に影響する野菜と、相互に働きを補い合う可能性が高いのです。
池田アイコン
薬剤師こそ、そういった助言ができるということですね。
板倉アイコン
ええ。当面の症状だけ抑えようと薬局に薬を買いに来た方にも、体の仕組みや薬の体内での作用について説明したり、食生活・生活習慣における指導をしたりする人が必要です。この役割に最適なのが薬剤師ですよ。私が子どもの頃は家に富山の薬売りの置き薬があり、いろいろ病気の相談に乗ってくれたようで、母はよく薬の情報を知っていました。それを現代の薬剤師の皆さんがやってくれたらと思います。
池田アイコン
そうですね。薬剤師の方が親身に相談に乗ってくださったら、どんなに心強いか分かりませんもの。先生、今日は素敵なお話をありがとうございました。

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板倉 弘重(いたくら・ひろしげ)
プロフィール
医療法人社団IHL品川イーストワンメディカルクリニック理事長、国立健康・栄養研究所名誉所員、日本動脈硬化学会名誉会員。1961年に東京大学医学部を卒業後、沖中内科(沖中重雄先生率いる東京大学医学部附属病院第三内科)を経て、米・カリフォルニア大学サンフランシスコ心臓血管研究所に留学。1985年から96年まで国立健康・栄養研究所の臨床栄養部長を務める。現在はクリニックで臨床医をしながら、日本ポリフェノール学会理事長など複数の学会の役員をこなす。2006年に瑞宝双光章を受賞。かんき出版『最新の医学が解き明かす チョコレートの凄い効能』、主婦の友社『大丈夫!何とかなります 血糖値は下げられる』など、著書多数。おいしく楽しく動脈硬化を予防する高ポリフェノール食品としてチョコレートや赤ワインに着目し、その研究成果を社会に分かりやすく発信している。

「調剤薬局ジャーナル」2018年9月号より転載

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