薄紙を一枚一枚重ねるように患者さんからの信頼を得る努力を! 帝京平成大学薬学部教授 井手口 直子

薄紙を一枚一枚重ねるように患者さんからの信頼を得る努力を! 帝京平成大学薬学部教授 井手口 直子

  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4

連載Vol.1.コロナ禍で求められる薬剤師の役割

帝京平成大学薬学部教授 井手口 直子

連載Vol.1.コロナ禍で求められる薬剤師の役割

池田
本日は、薬剤師として、教育者として、また薬局経営者として幅広くご活躍の井手口直子先生にお話を伺います。 新型コロナウイルスの世界的な流行で、私たちの生活は大きく変わりました。有効な薬やワクチンがまだ存在しない状況で、薬局でも患者さんとのコミュニケーションが大きく変わってきていると思うのですが、いかがですか?
井手口
2店舗の薬局を経営していますが、1店舗は小児がメインで、もう1店舗は慢性疾患の内科がメインの薬局です。コロナの影響で小児は患者さんの人数が大幅に減りましたが、内科のほうは慢性疾患が中心ですから薬を切らすわけにいきません。感染のリスクをできるだけ減らすために薬局での滞在時間を短くしようと、薬局宛てに処方箋をFAXで流してもらい、薬を準備しておいて、後から患者さんに処方箋の原本を頂くというやり方で対応しています。 服薬指導でもなるべく窓口では話さないようにして、何かあったら後から電話で相談してもらう——という指針はあるのですが、これまでのやり方がいきなり断たれてしまうことで戸惑う患者さんもいます。もちろん、オンラインが安心だという人にはオンラインで対応すればよいのですが、大切なのは様々な手段をそろえて、患者さん一人一人の要望に応えられるような体制を整えておくことだと思います。
井手口直子氏
池田
先生の薬局では在宅医療にも力を入れていると聞いています。感染リスクが高くなるケースもあるのではと思いますが、どのような対応をしていらっしゃいますか?
井手口
外で薬の受け渡しを行うなど物理的接触をできるだけ最小限にすることを推奨しています。でも、これが実際には難しいのです。独り暮らしの高齢者が引きこもりっぱなしだと持病を悪化させかねません。また、誰かと話したいと思う気持ちも理解できますから、そこをどうやって防護しつつ、責務を全うするかが課題ですね。そこで、私が副会長をさせていただいているJ-HOP(全国薬剤師・在宅療養支援連絡会 http://www.j-hop.jp)では、プロジェクトチームで訪問服薬指導に関してチェックリストを作り、公表しました。このリストを基に、薬局や薬剤師が在宅療養者に対して、双方の安全を守りながら安定的に医薬品を供給してほしいと思います。
池田
チェックリストとは素晴らしいアイデアですね。患者さんそれぞれに必要とされるものが違うでしょうし、多様化しているのではないですか?
井手口
その通りです。その多様化に合わせていくのが、こちらの役割なのだと思います。特に在宅医療はヘルパーさんなど、他業種の方との連携が不可欠ですから、そういう職種の方たちとの情報共有に関しても今まで以上に気を遣いますね。

VOL.2 へ続く >>

井手口 直子(いでぐち・なおこ)
プロフィール
帝京大学薬学部を卒業、薬剤師として勤務後、独立して株式会社新医療総合研究所を設立。日本大学専任講師、帝京平成大学薬学部准教授を経て、2013年より教授に就任。薬学博士、教育博士。日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会常任理事、全国薬剤師・在宅療法支援連絡会副会長、日本地域薬局薬学会理事等を務める。ラジオNIKKEI『井手口直子のメディカルCafé』のパーソナリティとしても活躍中。最新刊『薬剤師になるには』(編著・ぺりかん社)のほか、著書多数。

「調剤薬局ジャーナル」2020年7月号より転載

【 TOPページ へ 】