- 松尾会長とはよくご一緒に会食をする機会がありますが、昔から食への関心はお高かったのですか?
- 僕の父がとても食いしん坊だったんですよ(笑)。父は東京で大学教授をしていましたが、僕は学童疎開で父の実家の九州で暮らしていました。夏休みなどに父が帰ってくると、かりんとうやらシウマイやら、汽車の沿線で買ってきたお土産をたくさんもってきてくれて、それを九州の片田舎で待っているのが楽しみでね。思えばそれが今の食への関心の最初のきっかけだったのかな。
松尾歯科医院(桜丘診療所)
- おいしく食べるためには口腔内がちゃんとしていないとダメですものね。私は「未病」という言葉に強い関心があるんですが、歯科の観点から松尾会長はどのような考えをお持ちでいらっしゃいますか?
- 今、歯科医院の門をたたく人は1日におよそ130万人(※5)といわれています。歯科医はフェイス・トゥ・フェイスで診察しますから、患者さんの顔色や体調のちょっとした変化に気がつくものなのです。ところが最近の内科医はろくに顔も見ずに、たった数分話を聞いて、パソコンに症状を打ち込んで終わっちゃう…。僕は「手当て」は医療の原点だと思っています。患者さんに触れることで痛みをやわらげる「タクティール」という緩和ケア療法もあるように、顔を合わせて手を当て、会話をすることは、医療にとってとても大切なこと。歯科医院は歯を治すだけでなく、患者さんのあらゆる健康情報を集めて健康管理に役立てる場所になればいいと思っています。医療はCure(治療)からCare(日常的な定期健診やQOLの向上)に変化し、さらに「患者の生涯に寄り添う医療」が必要とされる時代になってきています。いまや歯科医はもちろん、医師、看護士、薬剤師、管理栄養士、さらにはMR(医薬情報担当者)に携わる人たちも栄養学を学び、連携していく必要があると感じています。
すばらしいお考えですね。共感します。マザーレンカは「チョコレートで楽しく、おいしく、セルフメディケーション」をテーマにしています。医療従事者でない自分が、だからこそできることを考え、商品開発をしています。スーパーフードであるカカオの力を生かし、チョコレートで健康寿命を延ばすために、今は成人病をテーマにした砂糖不使用のチョコレートを販売しております。今後は認知症、そしてロコモーティブシンドロームに対応したチョコレートを開発したいと考えています。
この度は、日本アンチエイジング歯科学会の松尾会長をお迎えして、お口のプロフェッショナルより、口腔からのセルフメディケーションについて貴重なお話を伺うことができました。ありがとうございました。
[取材日 2016.09.29]
『歯科界の旗手20人 あの先生のライフスタイル①』(日本歯科新聞社刊)に登場
- 松尾 通(まつお・とおる)
プロフィール - 歯学博士。松尾歯科医院院長。日本歯科大学卒。東京・目黒に松尾歯科医院を開業し、歯科医として活躍する一方、「美しい歯と笑顔」の効用と重要性を早くから説いてきた「スマイル運動」の提唱者。日本アンチエイジング歯科学会会長、一般社団法人日本歯科TC協会理事長、日本歯科審美学会顧問、米国歯科審美学会フェロー、日本歯科人間ドック学会監事など、数々の要職を務める。趣味は旅行、音楽、映画、俳句。
日本アンチエイジング歯科学会
http://www.jd-aa.net/
『美顔のススメ 口元から始めるアンチエイジング』 松尾 通 著
(インプレス・クイックブックス)