セルフメディケーション シリーズ 対談:チョコレートとカラダのおいしい関係について

セルフメディケーション シリーズ 対談:チョコレートとカラダのおいしい関係について

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連載Vol.4 チョコレートが脳に効くってホント? 愛知学院大学心身科学部 客員教授 大澤 俊彦氏(おおさわ としひこ・農学博士)

愛知学院大学心身科学部 客員教授 大澤 俊彦氏(おおさわ としひこ・農学博士)

連載Vol.4 チョコレートが脳に効くってホント?

Q:
大澤先生は、2002年以来、日本チョコレート・ココア協会主催の「チョコレート国際栄養シンポジウム」の実行副委員長でいらっしゃいますね?
A:
はい、25年ほど前からココアの研究をしていて、その有効成分に非常に強い抗酸化性があることを発見しました。その流れで、十数年前からチョコレートの研究も始めました。日本人のチョコレート摂取量は1人あたり年間2kg以下ですが、欧米では大人に好まれ、特に世界一のドイツでは12kg以上食べています。
Q:
健康効果を理論的に考えて摂取する人が多いのでしょうね。日本での最近のチョコレートブームも、やはりエビデンス(科学的根拠)がしっかり示されたことがキッカケでしょうか?
A:
前回ご紹介した「蒲郡(がまごおり)スタディ」の影響が大きいと思います。我々は動物実験で、カカオポリフェノールが動脈硬化を防ぎ血圧を下げることを確認済みでしたが、蒲郡スタディは、ヒトのデータを統計処理して有意差検定を行った東洋初の臨床研究でした。4週間の実験で、見事に皆さんの血圧が下がったのです。最高140mmHg、最低90mmHg以上の高血圧の約80人のヒトが、平均6mmHgも低下しました。一方、正常血圧の人はほとんど下がりませんでした。
Q:
そこが素晴らしいですよね。薬と食品の違いかなと思います。
A:
当然、動脈硬化のリスクも下がりますしね。それに、LDL(悪玉コレステロール)はあまり変わらず、HDL(善玉コレステロール)は有意に上がりました。HDLには末梢にあるコレステロールを肝臓に戻す働きがあるので、これも動脈硬化のリスクを下げます。
Q:
こういうエビデンスこそ、セルフメディケーションの要ですね。先生のお考えになるカカオポリフェノールの摂取量の目安は?
A:
まだ定説がありません。蒲郡スタディでは1日約630mgとってもらいましたが、これを普通のミルクチョコレートでとると高カロリーになってしまうので、動脈硬化やガンのリスクを低下するには、ポリフェノール量の多いチョコレートを選ぶことがポイントでしょう。
Q:
その後、脳への良い影響も明らかになったそうですね?
A:
2017年1月、45~68歳の男女15人ずつが同量のチョコレートを摂取したところ、4週間で大脳皮質の量が増えたという研究が発表されました(※1)。蒲郡スタディでは、記憶をつかさどる海馬に多く含まれ、ニューロンの産生を促進すると言われる「BNDF(Brain-Derived Neurotrophic Factor、脳由来神経栄養因子)」も有意に増えました。BDNFは、高齢化や認知症や鬱で減ることがしられているタンパク質ですので、今後の研究に期待が集まっています。

同じ摂取量で実験を重ねて、カカオポリフェノールの効果を検証中なのですね。さらなる発見がありそうで楽しみです。大澤先生、どうもありがとうございました。

[取材日 2017.2.16]

※1:明治と内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)
http://www.meiji.co.jp/chocohealthlife/pdf/report_170118.pdf

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大澤 俊彦(おおさわ・としひこ)
プロフィール
愛知学院大学心身科学部 客員教授。農学博士。1946年兵庫県生まれ。1969年東京大学農学部農芸化学科卒業、1974年同博士課程修了後、1977年までオーストラリア国立大学でリサーチフェロー。名古屋大学で機能性食品の研究を続け名誉教授に。1989年よりカリフォルニア大学デービス校環境毒性学部客員教授。2010年に名古屋大学発ベンチャー「株式会社ヘルスケアシステムズ」を立ち上げる。同年より現職。Antioxidant Unit(食品の抗酸化力の統一指標:略称A.O.U)研究会理事長、日本酸化ストレス学会理事、日本食品安全協会理事、「日本を健康にする!」研究会副会長などを務める。共著に朝倉書店『チョコレートの科学』 (食物と健康の科学シリーズ) など。

※掲載プロフィールは取材日(2017.2.16)当時のものです。

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