- 「健康サポート薬局」「かかりつけ薬剤師」制度が始まっています。今後ますます薬剤師の方が担う役割への期待が高まっていくと思うのですが。
- そうですね。それこそ薬局の数はコンビニよりも多くなり、とりわけ医療過疎や物流過疎が問題になっている地域では、キーとなる場所になりつつあるのではないでしょうか。「健康ステーション」としての位置付けが高まり、重要視されてくるのではと思います。 調剤だけではなく、患者さんの健康管理の一環として、食生活やサプリメントの指導なども大いに期待されていますので、そういったところでも機能性表示食品を活用していただきたいと思います。
- 私たち企業側は、薬剤師の方が説明しやすいものを用意するということも大切ですね。
- 機能性表示食品はいわゆるサプリメント形状だけでなく、半分くらいは加工食品なんです。チョコレートやインスタント食品など、普段の食事で機能性成分が摂れるものが多くあります。バラエティに富んだ商品が次々と出てくる中で、消費者に合ったものをおすすめすることが、薬剤師の大きな役目になっていくのではないでしょうか。 そこで一つ重要なのは、受診機会を奪ってはいけないということ。本当に病気であれば、病院で診てもらわないといけない。これは健康を維持・増進するという段階なのか、それとも診察を受けるべきなのかというのは、医者よりもむしろ、普段から話を聞いている薬剤師のほうが判断しやすいと思います。通院を促すことも大事な役割ですよ。
- 薬剤師の方は、カウンター越しに、お客様にどのように呼びかければいいでしょうか。
- セルフメディケーションが必要なのは、患者さんだけではなく、薬剤師も一緒です。自分の健康を守りたいという思いは皆が持っています。まずはご自分の健康に興味を持つこと、ですね。 そのうえで、具体的に伝えることが大事です。例えば、減塩してくださいと言われても、それだけではわかりにくい。梅干しを1個食べると塩分が2グラムになるから減塩の梅干しにするとか、魚を食べるときには、醤油ではなく、わさび、柚子などの薬味を使うと、少しの塩けでも味が感じられるとか。インスリンを上げないためには、野菜を先に食べるベジタブルファーストでいきましょうとか……。こんなふうに話したほうが、興味を持ってもらえて会話も弾み、相談しやすいのではと思いますね。
- 先に話していただいた健康教育にもつながります。まさに相談薬局ですね。本日はどうもありがとうございました。
[取材日 2018.4.20]
- 森下竜一(もりした・りゅういち)
プロフィール - 大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座 教授。医学博士。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米国スタンフォード大学循環器科客員講師を経て現職。内閣官房健康医療戦略参与、内閣府規制改革推進会議委員など、数々の要職を務める。著書に『アルツハイマーは脳の糖尿病だった』(青春出版社:共著)などがある。
「調剤薬局ジャーナル」2018年7月号より転載
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